水墨画豆知識1(概説)                     

 水墨画の歴史は古く、中国「漢」の時代の白描法(墨で描かれただけの絵画)に源を発

したと言われています。 日本には鎌倉時代後期、中国「宗」、「元」時代に仏教伝来と

同時に禅僧とともに山水画として伝わり、室町時代に雪舟が自ら中国に渡って中国の

絵画を学び、日本独自の様式の画風(水墨画の特徴である墨の濃淡やにじみ、ぼかし

などの技法を使って描かれた水墨画を創始しました。

大和絵、浮世絵など日本伝統の絵画は、開国後、パリの博覧会などを介して、ジャポニ

スムとまで言われる影響を西洋絵画に与えました。日本美術はゴッホやフェノロサ

によって(西洋画のように事物をそのまま正確に描くのではなく、簡素化されて描画法

で描くが、その絵の中に生き生きと生気が描かれていると)評価されました。さらに

「日本画」は、岡倉天心らの努力により発展しました。

日本は、短歌や俳句のように、文字文化にも簡素化した表現の中で、より深い感性を

表現できる文化を生み出しています。

このように、水墨画、日本画、俳句などに見られる簡素化の文化を「引き算の文化」、

「不足のところを付け足していく西洋画の文化を、「足し算の文化」と呼ばれることも

あります。

日本独自の感性表現でしょうか?以下に、水墨画の特徴を簡潔にまとめておきます。

詳しくは、豆知識2以降をお読みください。。

水墨画 :

水墨画は、主に中国、朝鮮、および日本などの東アジアの国々で墨を使って描かれ、

淡い色彩が付けられる場合もありますが、通常すべてが墨の色一色で描かれた絵画の

ことです。

水墨画は、墨の黒一色でありながら対象物から無駄を省き、空間を巧みに配置し

て多彩な技法を用いて描かれています。

水墨画で描かれた黒と白のモノトーンの世界は、日本人の心に深く根付く「わび・

さびなどの渋さ・質素さを好む文化」「茶道、華道にみられる人をもてなし、心を落ち

着つかさせることを愛する文化」に通じています。そのため、現代においても水墨画

は日本人を魅了し続ける絵画です。

水墨画の特徴

1・ 対象物を決して写実的・説明的に細密に描かないことです。
水墨画では作家が対象物から心で感じた精神的な美や自然の生命力、特色を映像化して

簡潔・簡素にかつ端的に強調して描かれます。

2・ 余白が効果的に用いられることです。あえて描かないことで、見る者の想像力

をかき立て混ぜて

水墨画に余白があることで、緊張感、躍動感、生命感、無限の広がりなどさまざまな

効果を生みだします。

3・ 単に見た目ではなく、水墨画では対象物の色彩を墨の濃淡、にじみ、ぼかし、

グラデーション、そして紙の白さに凝縮・純化して一色に落とし込まれて描かれて

ます。そのため、見る人それぞれに異なった色彩を感じさせます。
4・ この一色という緊張感に加えて、水墨画は描き直しがきかないで気迫を込めて描か

れたという、作家の緊迫感と共に、絵に生命感も見る人に伝わる絵画です。

 

水墨画に関する豆知識は、水墨画豆知識2へと続きます。